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起業の心得

あなたの1時間に値札をつけてくれる人はいますか?

起業の心得」というカテゴリーで、事業を興す時に考えていたこと・考えていることをメモ的に随時投稿していきます。

起業の初期の頃や独立当初においては、在庫を抱えないスモール事業から始めることが何よりもおすすめです。

在庫を持たないというのは、固定費がかからないということ。精神的にすごく楽なことは大切です。
オフィスや従業員を抱えず、まずは一人でスモールスタートすることで、自分自身で一円を稼ぐということの実感を持つことができるようになります。

フリーランス業というのはいわゆる「受託業」ですから、自分で何か商品やサービスを作るのではなくて、誰からの事業を手伝うことによってフィーをいただく、というモデルになります。

起業初心者がいきなり「事業計画」と「プロトタイプ」をつくって、そのために資金繰りをしてエンジニアを雇って、みたいなことをしがちですが、事業やサービスを作るのは経験者でも難しい。

受託業というのはリスクを抱えないでお金を作っていくことができるので、始めるならまずはそこからです。
自分で一円を稼いで初めて、その次の議論ができるのです。

法人営業はそれ自体が価値になるほど難易度が高い

この記事を読んでいる人の大半は、会社員で、かつ営業を担っている可能性が高いです。

僕が最初に新卒で入った上場企業も、200名を超える総合職の新卒がいましたが、扱う商材は違えど8割は法人営業に配属されます。

「営業なんて」と思う人も多いかもしれませんが、独立をした時に最も生きる経験というのがこの法人営業の経験です。

独立や複業をフリーランス(個人事業)的に考える人の多くは、企業から仕事をいただくことになります。

自分の名前で仕事をし始めた時に最も難しいのは、自分個人に仕事を発注してくれる先を見つけること。
ようは営業です。

それはまさしく法人営業で、個人で仕事をする場合は最も難易度が高いのがこの法人営業です。

法人営業と言えば会社員であれば会社の看板、ブランド、そして売る商材があって、それを企業に売っていくだけだと思いますが、独立をしたら売らないといけないものは商材ではなくあなた自身です。

あなた自身の1時間に対して、いくら支払ってもらえるのか?その先を見つけることができるのか?
というのが、フリーランスで仕事ができるか否かの生命線なのです。

今のあなたの1時間に値札をつけてくれる人が市場にいますか?

僕自身も2年間、会社員とフラクタルの経営を掛け持ちしましたが、コンサルティングという目に見えない形のないものを売るということの難しさは、会社員を経験しているからこそ痛感することでした。

そして同時に、ある一定のラインを超えるとむしろ「会社から与えられた商材を売る」ことよりも、自分自身のリソースを売ることの方が遥かに簡単である、というブレイクスルーのポイントを迎えることができます。

受託業をやったことのある経営者は皆、自分自身というリソースを売ることなんて、簡単だということをわかっています。

あなたの提供するものは、企業の何の機能を代替するのか?

ここからが本題。法人営業をしていく上で大切な考え方が2つあります。

1つは、受託業は相手企業の利益を生むためにコストの代替から入るという視点。

もう1つは、利益を生むために提供する価値は、何の機能を代替するものなのか?という視点です。

1つずつ解説します。

まず1つ目の「企業の利益=コストの代替」というところから。

基本的な方程式として、『利益=売上/コスト』という分数があります。

当たり前の話ですが、大事なこと。
複業やフリーランス、コンサルティングを含めた受託業というのは、この方程式の右辺の分母(=コスト)を下げるものであるということ。

利益を上げるためには、売り上げを上げるか、コストを下げるか、の二択な訳ですが、受託業というのは自分自身のリソース、ようはスキルや経験、あるいは時間や労働力を提供するモデルなわけです。

ここで多くの人は、売上を上げるための提案をやってしまう。
具体的には「営業戦略」とか「新規事業のアイディア」とか「マーケティング」とか、そういうものです。

でも、相手の企業には経営者がいるし、基本的に売上に直結する機能は持っているわけです。
名前も知らない見ず知らずのあなたに、自社の営業戦略や新規事業とかをいきなり任せることはありません。
(大企業のサラリーマン部課長が、コンサルティングファームに依頼するのはまた別の話ですが、ここでは割愛)

上のような「新規事業の提案」のようなカッコいい提案で受注できるのであればぜひどうぞ!ということなのですが、それができる人はこんなブログなんて読んでいないわけですから、そんなプライドは捨ててください。

受託業が代替するのは相手企業の人件費であり、コストであるべきです。

例えばフラクタルの場合は、基本的にオーナー経営者がクライアントですから、経営者の頭の中にある構想を実現したい、でも自社の社員では実現できない(or 物事が進まない)というところに対して、入らせていただく。

推進できない、歩留まりとなってしまっているところに対して、フラクタルが入り込むことで物事が形になるし、進んでいくんです。これがまさしく「コストの代替」として社員の代わりに物事を実現することで、経営者はお金で時間を買っているわけです。だからコンサルティングフィーをもらうことができる。

なんでも良いのです。例えば特定の領域のスキルを持っている、情報を持っている、得意なことがある、などもコストの代替です。先方の企業がどのようなビジネスモデルで、年に(月にでも良い)どのくらいの人件費を割いているのか?をざっくりと把握することができれば、自分自身のリソースを売ることなんて難しくないのです。

「リソースを売る」というと言葉が微妙なのであれば、「自分自身をクライアントに欲しがってもらう」と言い換えても良いです。自分自身の経験、スキル、あるいはビジネスリテラシーの高さでも良い。

「私はこれができる」という自分起点ではなく、「相手が困っていることに対して、こういう解決の関わり方ができる」という相手起点での提案ができれば、フリーランスで仕事に困ることはないはずです。

そして2つ目は応用編。利益を生むために提供する価値は、何の機能を代替するものなのか?という点について。

これは前提として1つ目の「受託業はコストの代替である」から入ったとして、その提供価値が「クライアント内にある何の機能を代替するものなのか?」という視点のことです。

わかりやすく「営業」の中でも特に「提案営業」の機能を代替するだとか、「新規事業」の中でも「既存クライアントに新たな商材をクロスセルし、そこから共通項を括って事業を作る」ことだとか、色々なバリエーションがあります。

ようは「コストの代替」の解像度を上げ、価値をしっかりと明文化しよう、ということです。

これは特に受託業をチームでやるだとか、会社として「特定の領域に特化した受託の事業を作る」と言った際に有効になる考え方で、積み上げ的ではありますが1つ1つの受託の実績を狙って作りにいく必要があるわけです。

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神里優斗

最後の泥沼までお付き合いいたします。事業開発コンサルティングを行うフラクタル株式会社の代表取締役| 時代を越える原理原則と向き合うメディア「縮尺」編集長|

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