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コラム

何度も催促する前に、人が動ける仕組みを考える

仕事をしていると、いろいろな「空欄」に出会います。

何度お願いしても埋まらないスプレッドシート。返ってこない確認事項。「今日の18時までにお願いします!」ともう一度連絡しながら、「なんでやってくれないんだろう」と思ってしまう。私にも、そんなことがあります。でも、同じ空欄が残るなら、お願いの仕方だけじゃなくて、動きやすい状態だったか考えてみてもいいのかもしれません。

そんなことを考えていたら、面白い事例がありました。

WHO(世界保健機関)が普及を進めている「手術安全チェックリスト」です。

手術前後に確認する19項目をまとめた、とてもシンプルなものですが、
面白いのは「チェックリストを作った」ことだけではありません。

決まったタイミングで一度手を止め、チームで声に出して確認する。
誰が確認するのかも決めておく。
そして、ただ導入するのではなく、現場の人を巻き込み、
教育し、フィードバックしながら、その現場に合う形にしていく。

WHOが紹介している8都市での研究では、このチェックリストの導入後、
重大な合併症は11%から7%へ、入院中の死亡は1.5%から0.8%へ減少したと報告されています。

これは「ちゃんと確認してください」と人に求め続けた結果ではありません。

ちゃんと確認できる“状態”をつくった。

ここが、とても面白いと思いました。

行動科学にも似た考え方があります。
英国のBehavioural Insights Teamが提唱した「EAST」という考え方では、人の行動を促したいとき、
Easy(簡単にする)、Attractive(魅力的にする)、
Social(社会的な力を使う)、Timely(適切なタイミングで届ける)という4つの視点から考えます。

つまり、

「なぜやってくれないのか」

ではなく、

「やりやすかっただろうか」
「自分がやることだとわかっただろうか」
「必要なタイミングで情報が届いていただろうか」

と考えてみる。

そうすると、空欄の見え方も少し変わってきます。

空欄は、誰かがやってくれなかった跡ではなく、
人が動くために足りなかったものを教えてくれているのかもしれません。

ただ、だからといって、何でも仕組み化すればいいとも思いません。
人は、仕組みだけで動くものでもないからです。

誰かから声をかけられたり、目的に納得したり、
自分の役割がわかったり、周りの人との関係の中で「やろう」と思ったりする。

仕組み、情報、タイミング、役割、関係性。

そういうものがうまく重なったとき、
人は自然に動きはじめるのだと思います。

植物に「伸びてください」とお願いしても、伸びません。

土があり、水があり、光があり、ちょうどいい温度がある。
その条件が整えば、植物は自分で伸びていきます。

組織も、少し似ているのかもしれません。

人を動かそうとするより、
人が自然に動ける状態をつくる。

次に空欄を見つけたら、
「誰が書いていないんだろう」の、そのもう一歩先を考えてみる。

その小さな空欄に、
組織を少しよくするヒントが隠れているのかもしれないなと考えてます。


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  1. 何度も催促する前に、人が動ける仕組みを考える

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  3. 「強い社長がいる会社」では、社員は育たないのか。

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